たった7日間で恋人になる方法
『…俺の身近に、どうしようもない女好きがいてね、顔も体格も申し分のないイイ男で、仕事はもちろん、地位も金もあるもんだから、俺以上に近づく女性も後を絶たない…しかし彼は立場上、おおっぴろに女性と遊んだりなどできない身。だから…』
”―――――如月、お前の名前借りるぞ”
『まさか…!?』
『ああ』
『だ、だって専務には、奥様も、お子さんだって…』
『だからだろ?専務なりに、家族は大事に想ってて、傷つけたくはないらしい』
『何よソレ、結局、奥さん裏切っておいて、最低じゃない』
身勝手な男性の言い分に、腹が立つと同時に、それを黙認した拓真君にも、腹が立った。
『第一だからって、どうして拓真君が、そんなこと許すのよ?』
『どうしてって…そうだな、当時は、別に誤解されたら困る相手もいなかったし、それよりも、正直仕事に集中したかったから、むしろこっちは、女性にとって悪いイメージでも付けば、それはそれで助かるかな…と』
つまり、”自分の身を隠して女性と遊びたい”専務と、”女性を敬遠して仕事に没頭したい”拓真君の、お互いの利害が一致したということらしい。
『それじゃ、解雇された原因も…』
『業務時間内に会議室で…って話か?もちろん、俺じゃない。そもそも、俺はそんなヘマはしない』
何故か自信ありげにサラリと言ってのける。
『最も、専務だってそんな馬鹿じゃないさ。女性と遊ぶと言っても、それなりの相手は選んでいたし、俺の名を使ってた分、限度はわきまえていたはずだ。…だから、あの件に関しては、専務を陥れるために、仕組まれた可能性が高い』
『…仕組まれた?』
『杉崎専務の話じゃ、あの若さで専務になった杉崎さんを面白く思わない連中が、側近である俺の失態を狙っていたんだろうって…』
『待って、そこまでわかってて、なんで拓真君が会社を辞めなきゃいけなかったの?拓真君の身の潔白は、専務が一番わかってるでしょ?』
『まァ…それが、専務の怖いとこだよ』