たった7日間で恋人になる方法
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1年半前2月某日
【自社ビル11階 専務室】
『解雇!?』
『そうだ、お前には今月末付けで、会社を辞めてもらう』
『なっ、どういうことです??まさか今回の件で、専務の身代わりになって辞めろって言うんですか!?』
『まぁ落ち着け、如月』
『これが落ち着けるわけないでしょ、そもそも私が何もしていないことは、専務が一番わかってるじゃないですか?なのに、解雇って、そんな理不尽なこと…って、こんな時に、何笑ってるんですか!?』
目の前では、部下に解雇通告をしながら、可笑しそうに笑いを堪える、不謹慎極まりない上司。
『いや、スマン。お前がそんなに取り乱すとはな…』
『は?』
『あ~悪い、今回の件だが、俺が完全に迂闊だったのは、素直に認める』
『当然です、だいたい、社内でコトに及ぶとか有り得ませんよ』
『如月、お前何か誤解してるようだが、俺は今回はもちろん、過去にも、社内外で妻以外とそういった行為に及んだことは、断じてないぞ?』
『…どうだか』
『おいおい、お前にはいつも言っているだろ?俺が愛してるのは、妻と子供だけだって』
『説得力が全くありませんね』
『それは、心外だな』
デスクの上に飾られた家族写真に視線を送ると、CMに出てきそうな理想的な家族の幸せそうな笑顔が、今日は妙に空々しくさえ思えてしまう。
『それより、匿名で社長に送られてきた動画には、一体何が映ってたのですか?』
『ああ、実のところ隠し撮りだからか、全体的に薄暗くてな、明確にはそこに誰がいて、何が行われているかは、全くわからない』
『それだったら…!』
『ただし、悪いことに、相手の女性が、君の名をハッキリ口にしている…それも、非常に甘ったるい声でね』
『なっ…』
その甘ったるい声を出させた張本人は、しっかりと組んだ手の上に、日に焼けた端正な顔を乗せて、にやりと微笑んだ。