たった7日間で恋人になる方法
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開け放たれた窓から、涼し気な夜風が入ってきた。
『海外のプロジェクトに…?』
『ああ、後から聞いたら、その一件があっても無くても、もともと俺をそのプロジェクトに参加させるつもりでいたらしい』
拓真君の話は、私の想像の範疇を軽く越してしまっていた。
『俺はそれからすぐNYに跳んで、向こうのチームに臨時スタッフとして参加させてもらった。自分的にも、ビジネス英語は学びたかったからね、それ自体は凄く勉強になったよ』
遠くNYでの日々を思い起こしながら、そう話す拓真君からは、もう既に同僚の”時枝君”の顔はどこにも見当たらない。
もはや住む世界さえ違う、別人と話をしているような気になる。
『そのプロジェクト自体は、8月の頭くらいに目途が着いたから、それを機に一時帰国して、次のPJが立ち上がるまで、少し長い休暇ができた』
『…その間に、モデルを?』
『固定の仕事でなければ、何をやっても良いって言われていたからね。まぁモデルと言っても、ターゲットの限られた少ない部数の雑誌だし、万が一バレたところで、会社には解雇されていることになっているのだから、問題は無い』
拓真君は、その間、専務からの雑用を頼まれたり、モデル事務所からイベントのバイトをもらったりして、過ごしていたらしい。
彼の場合、そうせざる得なくなった理由が理由だけに、ある程度の自由が許されていたらしかった。