たった7日間で恋人になる方法
拓真君は閉めた窓から手を離し、こちらに向きなおると、小さく息を吐き、まるで独り言のように、呟いた。
『そんなこと、もうわかるだろ』
明らかにそれまで話していたものと、声のトーンが変わり、その低く甘みの籠った声に、思わず、胸の奥がキュッと締め付けられる。
『そ、そんなの、わからないよ?』
動揺を口にする間にも、ゆっくりこちらに近づく拓真君を前に、思わず後ずさるも、直ぐ後ろにあるラックに阻まれた。
『…萌』
聞こえてきたのは、この数日間、仮初めの恋人として何度も呼ばれていた、私の名前。
すぐ触れるほどの近さまで近づかれ、思わず身を守るように、持っていた冊子を胸に抱きしめた。
『バーチャルな世界では、こんなシチュエーションは無かったかな?』
『…っ』
柔らかな笑みで、揶揄うように言いながら、敢えて私には触れず、持っていた雑誌をそっと取り上げられた。
そのまま手にした冊子を、ローラックの上に戻すと、ゆっくりこちらに向き直る。
『…このまま、終わりたくなかったからだよ』
『え…』
『さっきの答え』
窓から差し込む月明かりが、拓真君の端正な顔に影を落とし、男性なのに、綺麗だと思ってしまう。