たった7日間で恋人になる方法

これは、ゲームでもバーチャルな世界の物語でもない。

私が、自分の素直な気持ちを拓真君に答えたら、その瞬間からすべてが現実に動き出す。

そう思うと、嬉しさよりも”怖さ”が優先してしまう。

『…ごめん』

こんな自分には、リアル(現実)な恋愛なんて、できるわけない。

『私、やっぱり……』

そう口にすると同時に、伸びてきた強い力で手を引かれ、ポスリと拓真君の広い胸に落とされれば、ギュッと強く抱きしめられる。

咄嗟に逃げ出そうと抵抗してみるも、存外強く拘束されて、逃げ出そうにも、逃げられない。

『は、放してっ』
『…そんなに、嫌か?』

強引さと裏腹に、頭上から凄く優しい声が降ってきた。

『…なら、今、この手を緩めるから、俺の腕から逃げてみろよ』

そう言うと、直ぐに拓真君の腕の力が緩み、言葉通り、こちらが望めば逃げられる程度の力で抱きしめ直される。

と、こちらも直ぐに、この腕から逃げ出そうと、一旦拓真君の胸に手を置き、身を離してみるも、彼の胸に手を当てたまま、何故かその場から動けなくなってしまった。

この一週間、近くにいる度に無意識に感じていた、拓真君の匂いや体温が、この小さな空間に広がって堪らなく心地いい感覚。

男性の腕の中だというのに、全く不快感が無く、むしろこの上なく柔らかな安心感に包まれる。

不思議と、ずっとこのままこうしていたいと思ってしまうほどの極上の…。
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