たった7日間で恋人になる方法

耳に残るその声を振り払うように首を振れば、泣いたまま寝たからか、目の周りがやけに重い。

…とりあえず、冷たい水で顔を洗おう。

閉まっていたままのすべての遮光カーテンを開き、朝の陽ざしを室内に入れると、自分が寝ていたベットの乱れを直し、すぐそばの本棚の脇を抜けて、部屋の入り口から玄関に続く廊下に出た。

洗面に向かう前に、玄関先をのぞいてみるも、昨日置いてあったはずの拓真君の靴が無く、モダンなグレーのタイルの上には、自分の小さなサンダルが場違いのように置かれている。

”…やっぱり、出て行っちゃったんだ”

重い足取りで洗面に続く扉を開ければ、一人仕様の割に広すぎるスペースに、洗面と洗濯機、その奥が浴室になってるらしい。

『使わせて…もらいます』

小さく声に出してから、顔を洗い、さっきより幾分スッキリとした頭で、鏡の中の自分を見た。

目…少し腫れてる…かも。

我ながら泣きすぎだ。

もう充分大人の女性のくせに、急な展開とはいえ、あんな子供みたいに…。

『はぁ…』

情けない自分に呆れつつ、濡れた顔を拭くために、備わっているタオルを借りようとして、一瞬固まった。
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