たった7日間で恋人になる方法
文章はそこで終わり、用紙の横に置かれた二つの封筒の内、一つはタクシー代と書かれた真新しいもの、もう一つは一週間前に私が渡した、茶封筒。
確かに、それは自分が手渡した時のままのようで、この一週間、一緒にいた時に出して見せていたものは、拓真君が用意した別のものだったのだと、この時初めて知った。
”愛する琉星の為に、仮初めの恋人が必要だった私”と、”私との契約は大きなリスクがあったにも関わらず、善意で引き受けてくれた拓真君”
昨日伝えてくれた想いが本当だったとしたら、この数日間で、互いにいつどこで気持ちが動いたんだろう。
もう一度テーブルに置かれた用紙を手に取り、書かれた短い文章を読み返してみる。
文面は淡々と書かれていて、そこから拓真君の感情を読み取ることはできなかった。
…ただ、何度読み返してみても、そこには、”これから先のこと”が一切書かれていないことに、二人の関係に続きがないことは、わかった気がする。
いわゆるバーチャル恋愛ゲームで言えば、二人の未来の無い”バットエンド”なのだろう。
きっと、いくつかの分岐点で、いくつも選択を誤ったんだろうけど、今回はいろいろ思い当たりすぎて、答えがわからない。
第一これは【現実】で、今までのゲームみたいにリセットして、初めからやり直すことなんてできっこない。
『…ッ』
首筋のキス跡が、またツキンと痛みだす。
それは痛みというよりは、それよりもずっと甘い疼きのようで、あの時の…拓真君の唇が触れた瞬間を、身体が覚えているような感覚。