たった7日間で恋人になる方法
『事情はわかりました…けど、なんで僕なんですか?…自分で言うのもなんですが、僕は女性が、その…お付き合いしたいような男じゃないし、恋人役ならもっと適役な人、たくさんいるんじゃ…』

自分で自分を卑下する言葉を使いながら、それは残念ながら彼自身に対して、真っ当な自己評価でもあった。

確かに、仮初めの恋人と言っても、それなりの容姿や社交性が備わっていた方が、良いに決まっている。

それでも、私が彼を選んだのには、理由があるのだ。

『時枝君、引き受けてくれたら、これから毎日仕事が終わったら、私に付き合ってもらうことになるからね』

彼の質問には直接答えず、この依頼の本質を説明する。

『…毎日』
『実は、単に恋人って言っても、1年以上付き合っているって設定だから、演技とはいえ、それなりに見えるようにしなきゃいけないの…例えば、そうね、近くに寄り添ったり、手を繋いだり?』

今の琉星との関係を思い起こしながら、想像を巡らせる。

『手ッ、手まで繋ぐの?』
『恋人だもん、普通繋ぐんでしょ?』
『…でしょ?と言われましても…』
『そう考えたら、誰でもってわけにはいかないし…その点、時枝君なら、絶対安心だと思って』
『安心?…って、どうして…』

さっきよりだいぶ落ち着いてきた時枝君に、確信にせまる一手を突き付ける瞬間がやってきて、ごくりと唾を飲み込む。

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