たった7日間で恋人になる方法

『ね、さっきの専務との話で、どうしてもわからないことが一つ有るんだけど…』
『わからないこと?』
『専務が言ってた、拓真君が急にニューヨーク行きを断った理由って、なんなの?』
『は?』
『だってニューヨークだよ?よっぽどの理由がなければ、もったいなさ過ぎるでしょ…って拓真君?』

拓真君は、何故か一瞬固まって、次の瞬間、噴き出して笑い出す。

『何が可笑しいの?』

若干馬鹿にされた気がしてムッとするも、目の前の拓真君は、笑うのを必死に堪えている。

『ごめん…それはそのうち、教えるよ…ククク』
『そのうちって、そんなに秘密にするほどのことなの?』
『萌にはやっぱりもう少し、成長してもらわないとな』
『何よソレ』
『恋愛偏差値の話だ。君はかなり低すぎる』
『ちょっと、私、恋愛経験なら結構ある方なんだからね』
『ああ、バーチャルな話だろ』
『また、馬鹿にして!』

いつしか、ここが会社内且つ専務室であることも、職務時間内であるのさえ忘れてしまう。



一週間前まで、ただの同僚だった人が、今は誰よりも大切な人になる。

7日間、毎日二人きりの時間を作って

7日間、少しずつお互いを知って

7日間、触れ合う数が増えて行った

たった7日間で、恋人になる方法。

それは、ほんの少しの偶然と、ほんの少しの勇気が、もたらす奇蹟。


私と拓真君は、一週間の仮初めの恋人期間が終わり、いよいよ、今日からリアルな恋人レッスンがスタートする…。
< 267 / 274 >

この作品をシェア

pagetop