たった7日間で恋人になる方法

薄暗く狭い空間に、異性である時枝君と二人きり。

『何か、雰囲気ありますね?ここ』

若干息苦しささえ感じている自分とは対照的に、面白そうに周りを見回す時枝君。

『あの…時枝君』
『はい?』
『時枝君は、こういうの慣れてるの?』
『…慣れてる?』

そうだ…なぜか職場の時枝君にはない、妙な落ち着きと、スマートにオーダーを頼む、その手慣れた感じが、どうにも違和感を感じずにはいられない。

『時枝君に隠しても仕方ないから、先に言っちゃうけど、私、こんな風に男性と二人で食事するの初めてで、実は…これでもかなり緊張してるんだよね』
『え?マジ…いや、本当ですか?』
『うん…でも時枝君は、なんかこう慣れてる感じがするっていうか…』
『慣れてるなんて…ハハ…そんな訳ないじゃないですか』

時枝君は、ひきつったように笑い、さっきの自分のように、置かれた冷水を口に運ぶその姿は、一見動揺を隠しているようにも見える。

『もしかして、女の子とこんな風に飲みに行ったりとかって…』
『えっ!あ…』

持っていたグラスを思いのほか強くテーブルに置いたために、中身が少し零れてしまい、慌てる時枝君。

『す、すみません』
『ごめん、私が変なこと言ったから…』
『いえ、そういうわけじゃなくて…僕は、その…女性はちょっと…』

言われてすぐ、職場での時枝君を思い出す。
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