たった7日間で恋人になる方法

『この際、今から敬語やめてみてくれないかな?』
『は?』
『だって1年もつきあってて、自分の彼女に敬語で話すなんて、絶対おかしいでしょ』
『む、無理ですよ、いきなりそんな、急になんて』
『そこを何とか…ね?』
『そ…そう言われましても…』

時枝君サイドで考えたら、結構無謀なことを言ってる自覚はあるのだけど、ここは重要なことなので、頑張ってもらうしかない。

『私達はもうお互いの秘密を共有してる、同志でしょう?』
『同志…』
『あ!友達…そうね、友達だったらいいでしょ?ね?』

若干狭いテーブルに前のめりになって、両手を合わせて拝み倒す。

『時枝君、お願い!』

時枝君は、大げさに一つ溜息を吐くと、観念したように椅子の背もたれに大きくもたれて天井を見上げ、背筋を伸ばす。

『…わかりました』
『わかりました?』
『ハァ…はい、わかった…敬語はやめるよ』
『おお、うまいうまい』
『言っておくけど、職場では今まで通り、敬語で話すから』
『うん、それでいいよ、お互い、変に誤解されたら困るもんね』

急にスタートした時枝君のタメ口は、予想外に男性っぽく、さっきまで年下だと思っていたせいもあるけれど、急に”大人の男性”になったような気がする。
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