たった7日間で恋人になる方法

上がってきたエレベータの中は無人。

確かに、拓真君の言う通り、半面だけだと思っていたガラス張りは、やはり全面に広がり、今は向かいのビルと共に、すぐ下の車道が見えてる。

『えっと…じゃ、時枝君、また今夜よろしくね』

隣に立つ拓真君に毅然とした笑顔を見せ、エレベータに乗りこむと、できるだけガラス面を見ないように、すぐ左側にある階層ボタンのパネルに手を伸ばす。

『11階で良いですよね?』

ボタンを押そうとすると、その前に伸びてきた指で、そのボタンが押され、同時にゆっくり閉まる扉。

『拓真君!?』
『だから、職場では”時枝”だって言ったでしょ?萌さん』

びっくりして見上げると、さっきよりも近くに拓真君が立っていた。

『なんで?ここ10階以上しか止まらないよ?』
『知ってる』
『仕事は…』
『こっちは少しぐらい寄り道したって、平気だよ…それより、僕の後ろはあんまり見ない方が良い、そろそろ景色も良くなってくる階数だからね』
『!』

確かに、拓真君の後ろに広がるガラスの向こう側は、もう既に車道は見えず、近隣の低層ビルと都会の街並みが眼下に広がっていた。

思わずその高さに一瞬怯み、一歩後ずさると、すぐ後ろの壁に背があたる。
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