たった7日間で恋人になる方法


『ちょっと、いつの間に牧村さんと親しくなったのよ?』

毎朝、始業前に行われる朝礼が終わり、各自が自席に着いて、業務を始める時間、左隣の席の篠原さんが、デスクチェアをスライドさせて、ピタリと身を寄せてきた。

『そうですよ、抜け駆けです、森野さん』

何故か、角席の為に席の無い右側には、頬を膨らませた香織ちゃんが立っている。

どうやら、今朝1階のラウンジで牧村さんと一緒にいたところを、誰かが見ていて、”早朝の逢瀬”などと、一部の女子社員の間で噂になってしまっているらしい。

『誤解だよ?牧村さんとは、偶然会っただけで、何も無いし』
『嘘、二人とも、ジッと見つめ合っちゃって、タダならぬ雰囲気だったって、聞いたんだから』
『それは…』

少なくとも、私は見つめたりはしていないのに…と、心の中で反論。

『素敵な彼氏さんいるのに、イイ男二人も…なんて、納得いきませんよ』

まだ去年大学を出たばかりの、初々しさの残る香織ちゃんまで、どうやら結構本気で怒っているようだ。

前の席の菊田さんが『お前ら仕事中だぞ』と、注意をするも、少し恰幅の良い篠原さんに、ジロリと睨まれて、蛇に睨まれた蛙のように、一瞬で口を噤む。
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