たった7日間で恋人になる方法
言われなき疑いに、どう返答しょうか困っていると、それまで斜め前の席で黙って聞いていた美園が、唐突に噴き出した。
『ちょっと、美園、何笑ってんのよ』
『だって、こんな珍しい事あるんだな?って、…萌に、こんな噂が立つなんて…』
現実の私が、彼氏どころか、こういった噂話一つなく、この歳まで来たことを知ってる美園にとっては、この状況はこの上なく面白可笑しい光景なのだろう。
『美園!』
ついポロリと本当のことを言ってしまいそうな美園に、無言の圧力をかける。
美園は笑いを堪えながら”わかってる”と頷きつつも、一応フォローを入れてくれた。
『まぁ篠原、心配すること無いよ、萌と牧村さんは100%あり得ないから…第一、この前の食事会で萌に彼氏いること、牧村さんに言ったのって、篠原じゃなかった?』
案の定、予想通り彼女が、琉星のことを話したらしく、『そういえば…』と、そのことを思い出したのか、急にトーンダウンし始めた。
『あの人、わざわざ相手のいる女口説くほど、女性に困ってるようには見えないけどね』
『それは……確かに』
美園の一言で、明らかに流れが変わり、ここぞとばかりに権勢を立て直す。
『そうそう、私、牧村さんに琉星のこと聞かれて…あれ?何で知ってるのかなって思ったんだけど、それ、篠原さんが言ったんだね』
『えっと…ごめん、つい話の流れで…』
『ううん、隠してるわけじゃないし、全然問題ないよ』
さりげなく個人的な情報を、本人に無断で伝えたことを指摘すると、立場は完全に逆転し、誤解も溶けてホッとする。