たった7日間で恋人になる方法

『なんだ、良かったぁ~牧村さんクラスのメンズは貴重ですからねぇ、特定の恋人作らずに、夢見させてほしいしぃ』
『俺もフリーなんだけど、しばらく恋人作らずにいようかな?』
『菊田さんは、早く彼女作ってくださいね』

30歳目前の菊田さんが、20代前半の香織ちゃんにダメ出しされ、係内に笑いが起きる。

そういえば…と、香織ちゃんのセリフで、昨日の牧村さんの話を思い出した。

『菊田さん、うちの男性の社員で、”如月さん”って知ってます?』
『如月?』
『今はもう辞めちゃった人らしいんですけど…』
『その名前、聞いた事あるな…確か…』

菊田さんが、しばし思い出そうと考えてると

『去年の春ごろまで、専務の秘書だった男だろう』

菊田さんの後ろにあるパーテーションから、主任の斉藤さんが顔を出す。

『主任』
『お前達、業務始まってるんだぞ、いつまで雑談してるんだ?だいたい菊田まで一緒になって…』

30代半ば過ぎの生真面目そうな斉藤主任は、この中で一番歳上の菊田さんに向けて言い放ったけれど、当の本人は、主任の言葉で、何かを思い出したらしく『ああ!あの、スカしたイケメンかッ』と、口走る。

菊田さんの口から出た”イケメン”発言に、敏感な女性陣がすぐに反応を示す。

『今の…杉崎専務の秘書って、女性の…榊さんじゃなかったんですか?』
『ん?ああ、彼女は去年の春から専属になったんだ…如月が、退社してからな』
『主任、イケメンって、どの程度のですかぁ?』
『あ~そうだなぁ…まぁ秘書課や上層部の方では、だいぶ騒がれていたみたいだったが…』
『やだ…そんな有望な男性社員がいるなんて、全然知らなかった…』

この手の情報に関しては、鼻の利く篠原さんが、残念そうに悔しがる。
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