たった7日間で恋人になる方法
『えっと…これ、お店からのサービスだって』
『良いの?マスター』
『はい、今日は特別ですから』
何も知らないマスターは、単純に女っ気のない常連客の喜ばしい出来事として、捉えているのかもしれない。
拓真君がお礼を言うと、柔らかい笑顔で答え『では、ごゆっくりお寛ぎください』と、頭を下げると、スッと自分の持ち場に戻っていく。
『ここのパスタ絶品なんだ…せっかくだし、ありがたく戴こうか?』
『…うん』
拓真君は、肩に置いた手はそのままの状態で隣に座り、そのせいか最初に席に着いた時より、密着度が自然に高まった。
『マスター、何の話してた?』
『…何って?』
『いや、さっき、二人で何か楽しそうに会話してたみたいだったから』
自分の方は、あの男性とデレてたくせに、その間もこちらを注意して見ていたのだろうか。
『別に…ただ、拓真君が女性を連れてきたの初めてだって、驚かれただけ』
『ああ、言われてみたら、そうか…』
指して興味が無さそうにつぶやくと、飲みかけのグラスビールに手を伸ばす。
『…男性は』
『ん?』
『このお店に一緒に来た男性は、拓真君にとって、特別な人?』
少し、酔いが廻ってきたのかもしれない。
自分が何を聞きたいのかよくわからないまま口にし、拓真君に、その質問の意図を計りかねた顔をされる。