トラウマの恋
そんなある日。
仕事帰り。
珍しく予定のない金曜日だし
家で久しぶりに手の込んだご飯でも作って
撮りためていたドラマなんかを見ようと
いつもの駅のホームで電車を待っていると
「おい、茅菜。」
後ろから声をかけられた。
ドクン。
知ってる、この声。
「茅菜、こらシカトすんな。
こっち向けよ。」
わたしは彼にバレないように
深呼吸をして向き直った。
「あ、上原さん。こんばんは。
お久しぶりですね、
わたし急いでるので、失礼します。」
「待って。」
また腕を掴まれた。
「ごめん、ほんと。時間ない?
ちょっと話したくて。」
何だか少しシュンとした彼に
このまま流されそうになる。
駄目だ駄目だ。危ない。
「ごめんなさい。本当に急いでて。」
そう言って次に来た電車に飛び乗った。
まだ心臓がドクドクいってる。
やっぱ駄目だ。彼に会うと駄目なんだ。