トラウマの恋


それから約束の日まで
心の何処かがザワザワしていた。

わたし自身、迷っていた。

こんな不毛な恋を
いつまで続けるんだ。



そして当日。

会社の近くに迎えに行くといった圭斗くん。

断ったけど押されて負けてしまった。

人に見えないところと約束して
待ち合わせ場所に行くと
白のステーションワゴンが停まっていた。

「茅菜!こっち。乗って!」

助手席の窓を開け、顔を出した彼。


乗り込むと、
「はい、どうぞ。」

そう言ってわたしの好きな
コーヒーショップの飲み物を
手渡してくれた。

「ありがとう、ございます。
あっ!お金!払います!」

財布を取り出そうとする手を押さえられ

「いいって、
これ、来てくれたお礼だし。

てか敬語やめてよ。何か違和感。」

「じゃあありがとうございます。
いえ、これくらいで丁度いいんです。」


このままじゃ完全に彼のペースだ。
冷静さを保つためにも敬語のままで。


「…あっそ、わかった。
相変わらず変なところ頑固だなー。」

そう言って運転しながら笑う彼の顔を
ちらりと見るとなぜか涙が出そうになった。

危ない危ないと窓の外を見る。



「…菜、茅菜ー。おーい、起きろー。
着いたぞー。」

その声にハッとする。寝てたみたいだ。
もう、わたし何やってんのよ。

「ごめんなさい。
ちょっと寝ちゃってた。」

「久しぶりに見たよ、茅菜の寝顔。
今日大丈夫?やめとく?」


「大丈夫です!ほんとごめんなさい!」

ずるい。昔の話しないで。
わたしが意識し過ぎてるだけなのに
彼は何も考えずに言ってるのに、
いちいち反応しちゃう。

そう思いながら車を降りると
久しぶりに来た、圭斗くんの美容室。
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