トラウマの恋
「家どこ?」
運転しながら言う圭斗くん。
「あっ、××駅でお願いします!」
「いいって!家まで送るから」
駄目だ、家に来たら何のために
引っ越したか分からない。
新しい家に彼との思い出を作りたくない。
もう忘れたい。
「駅のスーパーで買い物して
帰ろうと思ってるんで。
ほんとに大丈夫です。
ありがとうございます。」
と言うとしぶしぶ降ろしてくれた。
「今日はありがとうございました!
髪の毛めっちゃいい感じです。
やっぱり上原さんの技術はすごいですね!
気を付けて帰って下さいね! 」
これは本音。
彼のことは本当に尊敬してるし
そのことをきちんと伝えたかった。
「はいはい、気を付けてな!
ありがとなー!」
と目を逸らす姿に照れてるなと思いながら
何も言わず車を見送った。