みだらな天使
その瞬間、身体が強張るのが自分でもわかった。




昨日はあんなに母親に言いたいことがあるって思ったのに…




なのに、いざとなるとやっぱり会うのが怖い。





あんな風に、新しい家庭を持って幸せそうにしていたのを目の当たりにして、怒りよりも悲しみの方が増していたことにも驚く。




やっぱり私を捨てたんだって…




そう痛感させられたから。






そんな私を見て、朔が優しく抱きしめてくれた。




「奏?あまり深く考えるな。きっと今色々考えたって、いざ目の前にしたら全部飛んでくぞ。その時…母親を目の前にした時、自然と出る言葉が、奏の本当の気持ちなんだからさ。」




頭をぽんぽんと撫でられ、不安な気持ちが抑えられていく。




朔の言うとおりかもしれない。




きっと今何を考えたって仕方のないこと。



それに、今日また駅前に行ったからって、あの人に会えるとは限らない。






だけど…





不思議だけど、今日もあそこに行けばきっとあの人もいる…





なぜかそんな風に感じていた。


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