みだらな天使

「こんにちは、おねーちゃん!」




何も知らないこの子は、満面の笑みで私を見上げるけど…




私は笑うことも話しかけることもできなかった。




すると…




「名前はなんて言うの?」




朔がしゃがんで、男の子と同じ目線で微笑みかける。




「コウタ!」



「そっか、コウタくんか。じゃあコウタくん。コウタくんのママと少しお話したいんだけどいいかな?」




朔、子供の扱い慣れてる。




…なんて、そんな風に他のことを考えられている自分に少し驚く。




「いいよ。ぼく、パパのとこいってるから!」




そう言ってコウタくんが走っていった先には、細身の男性が立っていた。




優しそうな男性。




その手前で気まずそうに目をそらす母親。




ぎゅっと手を握りしめる。


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