みだらな天使

「僕は今、奏さんとお付き合いさせていただいております。一緒に暮らしています。」



朔の言葉に、母が驚いた表情を見せた。




「彼のおかげで、私は幸せがどういうものかってわかった。人を信じることの大切さを知った。だから、もう私のことは放っておいて。」




嫌いとか、二度と顔を見たくないとか…




捨てられた憎しみとか、悲しみとか。




そんなもの、全部飛んでった。





…朔の言ったとおり。



今私が伝えたことが、本当に伝えたかったことなんだ。




私は幸せだって、胸を張って言いたかったんだ。





「もう、話すことは何もないから…」




朔のコートの裾を引っ張りながら小さくそう呟くと、朔はニコッと私を見た後、再び母に視線を移した。




そして…





「次お会いする時には、結婚の報告に参ります。それまでは僕が、大切なお嬢さんをお預かりいたします。」




え………








結婚…?




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