みだらな天使
朔の腕が後頭部に回り、ぐっと抱き寄せられる。
舌が絡まりあい、頭がぼーっとしてくる。
唇をそっと放し、私は文句を言ってやった。
「私以外の女のこと考えながら、ため息なんかつかないでよ。たとえそれが嫌なことでも、他の女のことなんかで悩まないで。」
醜い嫉妬。
それでも朔はフッと笑って私を優しく抱きしめる。
「そうだな、ごめんごめん。」
社長令嬢ってだけで負けてる気がするの。
だって、朔みたいな社長の肩書きを持つ人は、それなりの結婚相手を探すわけでしょ?
私みたいに、何も取り柄のない、親もいないような人間じゃ、朔の相手には相応しくないことはわかりきってるから。
…だから、よけいに加菜さんのことを考えてるなんて嫌なの。
朔のご両親も、加菜さんとの結婚を望んでるのかな。
その時、ふと気付いた。
そういえば、朔から家族の話って、七海さんのことしか聞いたことない。
ご両親は今何してるんだろう?