みだらな天使
「久しぶりだな。元気でやっているのか?」
「あんたには関係ないだろ。」
玄関を開けるや否や、親子とは到底思えないような会話を始めた二人。
ただ、朔のお父さんなんだなって思うのは、そのダンディーな顔立ち。
リビングから玄関を覗いていると、お父さんと目が合ってしまった。
「…君が咲田奏さんだね?」
「え…」
なんで私の名前を…?
そんな私の疑問は、朔がいとも簡単に言い当てた。
「…また秘書に調べさせたか?」
また?
またって、どういうことだろう。
良好とは言い難い二人の関係と、私を調べつくすことは関係があるのかな。
「可愛らしいお嬢さんじゃないか。…ただ、彼女が何を“持ってる”というんだ?」
お父さんがフッと笑いながらそう朔に言った。
その言葉の意味は、すぐにわかった。
…私の家柄のことを言ってるんだって。