みだらな天使
冷蔵庫にあるものを使ってカレーを作っている間、静かだなとは思っていた。




それがまさか…




「カレー、出来たけど。」




「そ、ありがと。“かなで”ちゃん?」




「なっ…なんで私の名前…」




…正体を暴かれるとは。





「カバンの中身、椅子から落ちて飛び出ちゃってたよ。」



そう言いながら男が手に持っているのは、私の高校の生徒手帳。




「サキは苗字から取ったの?咲田奏ちゃん。おまけに18歳なのにハタチだって年齢もサバ読みして。嘘つき慣れてんだねー。」




「…大人なんて、信用できないから」




なんでだろ。



いつもは、こんなこと言われたってサラッと流しちゃうのに。



流して、もう二度と関わらないように今すぐこの男の元から去るのに。




この男の前では、自分の思ってることをぶちまけないと気が済まなくて。





気づけば、大人を信用できないと口にしていた。

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