みだらな天使
「今日はあんたに言いたいことがあって来た。……母さんのことだ。」
朔の第一声に、眉をピクリと上げたお父さん。
「単刀直入に言う。なぜ母さんの危篤の知らせを受けても、病院に来なかった?」
「…あの日も言っただろう。仕事だ。」
お父さんは朔から目をそらしながら言った。
目をそらした…?
あのお父さんが…。
それは、朔も感じていたようで…
「なんで目をそらす?ハッキリ言ってくれよ。」
逃すまいと詰め寄る。
すると、七海さんが睨むようにお父さんを見て、言った。
「お母さんは最後までずっとお父さんのこと呼び続けていたのに!意識が朦朧とする中でも、ずっとずっと…!それなのに、お母さんより大事なものがあったっていうの!?そんなに仕事が大事だった!?答えてよ!」
七海さん…
言いたいこと、言えたね。
私は、涙を流す七海さんの背中をそっと支えた。