みだらな天使
「ふーん。…どうして?」
「2年前、母親に捨てられた。男を作って、女の顔して。私のことが邪魔になって、捨てられた。だから大人は嫌い。自分勝手で、わがまま。誰からも愛されなかった自分も嫌い。」
男は黙ったまま、私を見つめる。
「わかってるよ、一人じゃ何もできないことくらい…」
ほら、私めんどくさいでしょ。
さっさとこの家から追い出して欲しい。
…そう思ったのに。
「…すげーじゃん、カレー作れるんだから。」
「え…?」
目の前の男は、優しく微笑んでいた。
「何もできなくないじゃん。お前は俺のためにカレーを作ってくれた。俺の身体を心配してくれた。奏は優しい子なんだよ。」
「や…めて。その名前嫌いなの。母親に付けられた名前だから、奏って呼ばないでっ!!」
耳を塞ぎ、思わず声を荒げてしまった。
そんな私を、そっと抱きしめる男。
「ちょ、何…」
「奏は優しい。それに、誰からも愛されなかったなんて言うな。お前の人生、まだまだこれからだろ?」
男がそっと身体から私を離す。
そして、信じられない一言を放った。
「俺が奏を愛してやるよ。」