みだらな天使
「で、今日のメシは何?」
「昨日お買い物に行った時に買ってきたもので適当に作ろうかと…」
そう言いかけて、ふとひらめく。
「ね、なんか食べたいものある?」
他人にこんなこと聞いたの、初めてだ。
他人のためにここまでするのも初めて。
私はここに来て、少しは変わっているのかな。
「…奏?」
「あっ、ごめん。特にリクエストないのなら…」
「ハンバーグ」
「……………ん?」
「だから、ハンバーグ。」
大企業の社長が、ハンバーグって…
「…ふふ。わかった。」
そのギャップが可愛くて、思わず笑みをこぼしてしまう。
すると…
朔が静かだなと思ったら、黙ったまま目をまん丸にして私を見つめていた。
「…朔?」
「初めて…笑ったとこ見た。」
そう言われ、ハッとする。
私、笑ってた…?
母親に捨てられてから、笑うどころか、喜びの感情を無くしていた私。
そんな自分が無意識に笑っていたことに、驚く。