みだらな天使
「可愛いよ、奏。奏の笑顔、可愛い。」
またからかってくるのかと思いきや、朔の表情はすごく優しいものだった。
「そうやって、いろんな感情が思ったままに出るようになるといいな。」
頭を優しくポンポンとしながら、朔はそう呟いた。
いろんな感情…か。
私は、いろんな感情が欠落してるんだろうな。
朔と一緒にいれば、また笑えるようになるんだろうか。
でも、そんなことしたって、幸せになれるとは限らない。
私はこれ以上、弱くなりたくない。
「…ハンバーグ作る。」
「……うん」
パッと表情を戻した私に、朔はおそらく気づいただろう。
でも、何も言わなかった。
素直になれない私を、見守っててくれているのだろうか。
やはり岩塚朔という男といると、調子が狂う。
これ以上、朔に隙を見せたくない。
そんなことを思いながら、ハンバーグを作り始めた。