みだらな天使
『もしもし、復活した〜?』
どこかにカメラでもついてるのかってくらい、今の状況を言い当てられた私。
「と、とっくにね!」
『へえ〜、じゃあ明日はもうちょいレベル高いので行きますか。』
「ばっ、バカじゃないの!?」
『あははははは』
あれ以上のキスを朝からされたって、困るっての。
「そんなこと言うためにかけてきたわけ?」
恥ずかしさから電話を切ってやろうとすると…
『ごめんごめん。ちゃんと用事。』
そう言いながらもクスクスと笑っている朔。
『今日の会議に必要な書類を忘れちゃって。俺の書斎にA4サイズの茶封筒おいてあると思うんだけど…見てくれない?』
「茶封筒…?」
電話を耳に当てたまま大理石の床をペタペタと歩き、朔の書斎に初めて入った。
「…あったよ。これ、届けろってこと?」
『そういうこと。この前名刺渡しただろ?会社の住所そこだから。受付嬢にお前の名前言えばわかるようにしておくから。よろしく!』
そう言って、私が返事をする間もなく切れてしまった電話。
返事を聞かずして切れた、というよりは…
電話の向こうでしきりに“社長”と呼ばれる声が聞こえていた。
あんなだけど、大企業の社長…なんだよね。
「なんで私なんかを…」
…ここに住まわせているのだろう。
住む世界が違う気がして、ため息をついた。