みだらな天使

「社長、咲田様がお見えになりました。」



「入って。」



扉の向こうから朔の声がしただけで、なぜかほっとした私。




「それでは、こちらで失礼致します。」



「あ、ありがとうございました…」




受付嬢と別れ、社長室の奥へと進むと…




ドキッ…




そこには、スーツをビシッと着こなし、メガネをかけた朔の姿が。




もちろん、出かける時にスーツ姿は見ていたけど、メガネをかけた姿は初めてだった。




「資料ありがとな、奏。」



「…本当に社長なんだ。」




「俺は誰かさんと違って、偽ってねえぞ〜?」




メガネの奥でにこやかに微笑む朔。



その表情にまたドキッとする。





「…じゃあ、帰るから。」



この感情がバレてしまいそうで、朔に背を向けると…




「ちょっと待って。」



朔に腕を掴まれた。



< 29 / 147 >

この作品をシェア

pagetop