みだらな天使
「社長、咲田様がお見えになりました。」
「入って。」
扉の向こうから朔の声がしただけで、なぜかほっとした私。
「それでは、こちらで失礼致します。」
「あ、ありがとうございました…」
受付嬢と別れ、社長室の奥へと進むと…
ドキッ…
そこには、スーツをビシッと着こなし、メガネをかけた朔の姿が。
もちろん、出かける時にスーツ姿は見ていたけど、メガネをかけた姿は初めてだった。
「資料ありがとな、奏。」
「…本当に社長なんだ。」
「俺は誰かさんと違って、偽ってねえぞ〜?」
メガネの奥でにこやかに微笑む朔。
その表情にまたドキッとする。
「…じゃあ、帰るから。」
この感情がバレてしまいそうで、朔に背を向けると…
「ちょっと待って。」
朔に腕を掴まれた。