みだらな天使
「…じゃあ、行ってきます。」
朔より早く、あわよくば行ってきますのキスなしで出て行こうとしたら…
「奏、学校まで送るよ。」
スーツをビシッと着こなし、ニコッと微笑む朔。
「俺のかわいい奏に、何かあったら困るからね。」
サラッと“かわいい”なんて言っちゃう男。
天然?それとも計算?
朔にとっては大した言葉じゃないかもしれないけど…
それは、惚れられてる相手に言ってはいけない言葉だよ。
「ほーら、行くぞ。」
頭をぽんとはたかれ、朔の後に着いて駐車場まで歩いた。
そして…
「はい、どーぞ。奏ちゃん。」
朔が助手席のドアを開けて、紳士的にエスコートする。
「…隣に乗るの?」
「…後ろに乗る気?そんな寂しいこと言うなよ。」
違う。
嫌なわけじゃない。
嫌なはずがない。
…ドキドキするんだよ。
こんな密室で、朔の隣にいることが。
朔の横顔、息遣い、匂い…
五感で朔の全てをキャッチして、離れたくなくなりそう。
…この気持ち、隠しきれなくなりそうなの。