みだらな天使
その日の夜。



料理の支度を終えた頃、ちょうど玄関の鍵を開ける音がした。





「ただいまー」




「おかえりなさい、朔。」





パタパタとスリッパの音を鳴らしながら玄関まで迎えに行くと、朔が口元を押さえながら私から目をそらした。




「…朔?」




「いや…なんかヤバいな……」




そう言って私をチラリと見ては、再び目をそらす朔。




「その格好で“おかえり”はヤバイっしょ。新婚さんって感じ。」




「ええっ!?」




玄関前の姿見に映る自分をまじまじと見る。




どうやら、エプロン姿がそう連想させるみたい。




無意識とはいえ、そう指摘されると急に恥ずかしさがこみ上げてくる。




「ご、ご飯できてるからっ…」




真っ赤に染まっているであろう顔を隠すように朔から背を向ける。





しかし次の瞬間…




「…待って」





背後から朔に抱きしめられた。



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