みだらな天使
「奏…奏なのよね?」
子どもに抱きつかれながら困惑の表情を見せているのは、紛れもなく私を捨てた母親だ。
なに、その子ども。
「かな…」
「…わかった。」
そういうことね。
自分の心臓を落ち着かせる。
「…その子どもが出来たから、私が邪魔になった?だから捨てた?」
「待って、奏…」
「私の名前を呼ばないで!!」
駅前をウロウロしていた人たちが驚きの表情で私たちを見ていた。
でも、そんなことどうだっていい。
目障りで、耳障りで…
この女の前から早く立ち去りたくて。
気がつけば私は、朔の会社に向かって走り出していた。