君と恋をしよう
「あの! お誘いしたのは私ですし!」
「いいよ、女の子に支払わせるとかワリカンなんて性に合わないよ」
僕は彼女の財布を持つ手を押した、彼女はびくんっと体を強張せる。
表情から、恐怖が伝わってくる。
今のは不可抗力だけど、触ったら駄目なのか。
僕はくすりと笑ってみせた。
「じゃあ、今度奢ってもらうね」
言うと彼女は僕が触れた手を押さえながら、小さく頷いた。
***
早速不動産会社へ向かう。
店頭に貼り出された物件を見た。
「萌絵ちゃんちはどの辺?」
「東神奈川と反町の間です」
「家賃は、いくらくらい?」
「ワンルームで、管理費込みで七万円です」
「ワンルームで七万かあ、横浜駅にも近いからそんなもんかな」
悪くはないけど、高いもんだな。地元はもう少し安かったような?
「あ、萌絵ちゃん」
僕はとある物件を指差した。
「ここ、2DKで10万だよ、二人でルームシェアで住んだら今より安く済むよ?」
ルームシェア、もっと簡単に言えば同棲な。
言ってから僕は萌絵を見た、想像通りの反応に思わず笑った、真っ赤な顔で立ち竦んでいたのだ。
「あの……! 部屋は三月に借りたばかりで、親がお金を出してくれて、色々迷惑掛けたと思うし……なのに、もう出て行くのは……!」
懸命に言い募る。
「冗談だよ、まだ会って二回目の子と住まないって」
「もう!」
彼女は赤い顔のまま怒った、そんな仕草すら可愛い。
3軒目のお店で、中に入ってパソコンで探してもらった。
「家賃は10万以下、京浜東北線沿線、宅配ボックスあり、ワンムールか1DKくらいで……って、お二人ご一緒でなくていいんですか?」
言われて萌絵はまた真っ赤になる。
「ああ……彼女は今日は単なる付き添いです、最近部屋を借りたので、参考になる意見を貰えるかと思って」
「そうでしたか」
僕の説明に、萌絵も安堵の溜息を吐く。
「あ、あとすみません、駐車場も必要です。敷地内でも近所でも空きがあるところを」
何件か画面で紹介してもらって、実際の物件も見せてもらった。
家具もない、真新しい匂いのする部屋に入って。
なんか淳美と家を探していたのを思い出す、あの頃はこれから始まる未来にワクワクしていたっけ。
でもふと思う、今、僕はまたワクワクしている。
判る、萌絵がいるからだ。
萌絵は本当に付いてくるだけだが、その控えめな姿がまたいい。
若くて可愛い萌絵、君がそばにいるだけで誇らしい気持ちになるのは何故かな。
「こちらですと、ベランダも広いのでお子様が小さい間はここでプール遊びも」