君と恋をしよう

「あはは、だから彼女は恋人でもなんでもないですって」
「あ、すみません、つい……」

不動産屋仲介のお姉さんは顔を染めて苦笑いする。

それってさ、僕達はお似合いって事なのかな。

ちらりと萌絵を見てみたけれど、彼女はほんのり頬を赤く染めてうつむいたままだった。

結局横浜駅と反町駅の中ほど、台町にあるマンションに決めた。
少し高台にあるから見晴らしもいい、みなとみらいの夜景が見えるだろう。

職場のある横浜駅から近いのもあるが。彼女のマンションにも徒歩圏内なのが決め手だ。

持ち金だけで手付けを払い、二、三日内には契約すると伝えて店を辞した。

「付き合わせちゃってごめんね。でもありがと、今日は助かったよ」

歩きながら言う。

「いえ……私はお役には……」
「そんなことないよ、僕は賃貸物件なんか見たことなかったけど、意見を聞けて助かった」

言うと彼女は嬉しそうに微笑む、可愛いよなあ。

「あの」

彼女は控えめに言う。

「うん?」
「今度はいつ、会えますか?」

意外な言葉に、僕はきょとんとしてしまう。

「え、僕と?」
「はい」
「ええっと……」

確かにこんな若くて可愛い子と会う約束なんてラッキー、とは思った。

でも、ついこの間まで大学生だった子と、その、特別な関係になるなんて、それはなんか、犯罪、だよな?

「えっと、とりあえず来週は、僕はもう引っ越ししようかと思ってて」
「お手伝いします」
「え、でもさ……」
「駄目、ですか?」

~~~~!

その、上目遣いは、策略だろう!

体が、と言うより股間が熱くなるのを感じながら、僕は頷いていた。

「に、荷物は大してないんだ、新居の、掃除とか、なら……」

言うと彼女は無邪気に微笑んだ。

夜になって、僕はホテルの部屋に戻った、室内に入ってすぐ、天井を見上げて溜息を吐いてしまう。

だって。

あー、もう、マジか!

あの子は本当に俺なんかに興味があるのか!?

可愛い、若い、絶対男に苦労なんかないだろうに! よりによって嫁に捨てられたバツイチ男に!?

ホテルの部屋で僕は一人悶えた。

だって、いいのか? 子供と言っていい子と会う約束なんて……!
いや、でも、彼女が望んでるんだ、いいんだ、そして彼女は引っ越しの手伝いに来てくれるんだ、特別な事じゃない、うん、いいんだ!
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