君と恋をしよう

視線を萌絵に戻すと、いつもように真っ赤になって立ちすくんでいた。
僕は微笑んでしまう。

「送るよ、君が家に入るとこ見たら安心するから」

彼女は機械仕掛けのようにこくんと頷いてくれた。

しかし着いたアパートを見てびっくりした。

「……萌絵ちゃん」
「はい?」

ちょっと怒った口調になった僕に、萌絵はおっかなびっくり聞き返す。

だって……!

「仮にも女の子でしょ! もう少し防犯がしっかりしたアパート、あるでしょ!」

萌絵が「ここです」と教えてくれたアパートは木造二階建てで、いかにも昭和半ばの空気が漂う古いものだった。

当然、オートロックなんてない、吹きさらしの廊下は丸見えで、窓だって木製のサッシだ! 格子はついているけれど、それだって木製でどこまで中を守ってくれると言うんだ!?

これで家賃七万だと!? ぼったくりに近いぞ!?

「だって……これでも予算オーバーだったんです。私も働き始めたばかりで……」
「そうだけど!」

仮にも犯罪に巻き込まれかけた子が住む家じゃない! 僕の方が心配になる!

「やっぱり……!」

無理にでも、ルームシェアに踏み切ればよかった、とは心にしまった。

「……っ、今すぐじゃなくていいからっ、お金は援助してあげるからなるべく早く、女の子が安心して住める部屋を探そう!」
「でも……」
「親御さんも知ってるの!? このアパート!?」
「はい、一緒に探しに来ましたから」

僕は思わず溜息を吐いた、きっと自分の娘の魅力に気付いてない違いない。

「おっせかいなおじさんに言われたと言えばいいから。本当に、僕が不安だよ!」

僕があまりに言うから、萌絵も不安になったらしい、急に俯いてしまう。

「何かあったらすぐに連絡するんだよ。帰りが遅くなった時とかも! 駅から送ってあげるから!」

彼女は俯いたまま、小さく頷いた。

ああ、もう、本当に!!! 今すぐさらって行きたいよ!!!


***


翌日の日曜日も、会う約束をしていた。

前日にカーテンを買おうとしたら、サイズをきちんと図っていなかったので、適正なサイズが判らなかった、再度買いに来たのだ。

それを買うのにも萌絵は付き合ってくれて、さて、そのあと。

「さて……と。どうしようか? 少し早いけど、お昼でも食べる?」

幸いみなとみらいだ、いくらでもお店はある。
まだ十一時半だったが、食事をすることにした。

「萌絵ちゃんは会社があるから、地元みたいなものだよね。普段行かないお店がいいよね? 行きたいお店はある?」
「いえ、なんでもいいです」

それじゃあと、店を出た、やはり彼女は一歩下がって歩く。
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