君と恋をしよう

「みんな異口同音に荒療治すれば治るみたいな……平気で抱きついてきたりしてきました」
「辛かったね」

彼女はこくんと頷いた。

「余計に怖くなったのはそんな経験からです、胸……触られた事も」

あははー、男ってのは哀しい生き物で。

「男代表で謝るね、そんなヤツばっかじゃないから」

僕が言うと、彼女はすぐに「はい」と答えた。

「あの」

控えめに言う。

「そちらに並んで座ってもいいですか?」
「えっ?」

僕がわざわざ距離を開けようとしてるのに!?

「い、いいよ……」

君から来るというなら、君が傷ついても君の所為に、しちゃうよ?

彼女はゆっくり立ち上がると、僕が座る椅子に座り変えた、もっとも四人は横になって座れる椅子で、彼女と僕は端と端に座った。
それでも彼女は緊張していたのだろう、座ると大きく息を吐いた。

「……大丈夫?」

一応聞く。

「……はい」

彼女は床を見つめてる。

ゴンドラは、四分の一ほど進んだ。

「ねえ、そこからで悪いんだけど」
「はい」
「あっち、見てみて」

僕は自分の左肩の方、彼女からは僕越しになる窓の外を指差した、見た彼女は、

「わあ……っ!」

感嘆の声を上げた。

夕焼けになりかけた西の空が見える、そこにはシルエットの富士山も。

「残念、少し早かったね。列が並んでたからどうかなと思ってたけど」

もう少し遅い方が良かったかも、もっと夕闇が迫る方が、この景色は更に幻想的だから。夜景でも良かったしな。

「いいえ、とても綺麗です」

彼女は嬉しそうにそう言った、僕も嬉しくなる。

「折角こっち来たけどさ、こっちに座ったら、その方がよく見えるよ」

僕は目の前の席を指差した、彼女もこくんと頷いて移動する。
正直、一つの椅子の端と端より、近い。

でも彼女は窓の外に夢中だ、まあいい。

「あ、頂上です」

彼女は辺りを見回して言った、一段と周りは見渡せるから嬉しいようだ、きょろきょろとして周囲を確認していた。
さっきの展望台と言い、高いところは好きなのかな?

「萌絵ちゃん」
「は、はいっ」
「今日みたいに積極的になれるなら、もっと年の近い、こんなバツイチの男なんかじゃないの捕まえてさ、訓練したほうがいいよ」
「……え」
「怖いヤツもいるとは思うけどさ、世の中そんなヤツばっかじゃないし。今日は楽しかったよ、ありがと」
「藤木さん……!」

途端に泣きそうな顔になった。

「私も誰でも良いわけじゃないんです」
「でも男なんて大差ないよ」

僕だって、紳士なフリして頭の中は君をどうこうしたいとか思ってるんだよ。

「君みたいに可愛い子なら、すぐに親身になってくれる人現れるから」
「さっきも言いました、みんな強引で……!」
「学生の話でしょ、社会人はもうちょっと理性はあると思うよ」

彼女は項垂れた、勘違いしたくなる程、沈痛な顔。

「藤木さんが嫌なら、いいです」
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