君と恋をしよう
前妻との事



後輩の結婚式に出たのとほぼ同じ頃、僕は離婚した。

妻だった淳美とは、彼女が新人営業マンだった頃からの付き合いだ。

先輩営業マンとうちの社に来た淳美はガチガチに固まっていて、挨拶がやっとくらいだった。

三度目に来た時、先輩社員がいなくなった隙に言われた。

「あの! どうしたらうちの商品を扱ってもらえますか!?」

単刀直入な質問に僕は吹き出した、仮に答えて、その通りに実行されたら買うしかないじゃないか。

「そんなに売れてないの?」
「もっと二つ返事くらいで成立するものだと思ってました! なのに皆さん難しい顔をされて」
「まあ、自分のお金じゃないしさ。それで失敗したら僕の所為だし」

でも僕が話がし易いと思ったのか、それからも度々仕事の相談を受けるようになった、勿論仕事とプライベートは別、それで彼女の営業に簡単に落ちるような事はしない。

やがて、仕事終わりに食事や飲みに行く仲になった。

主に彼女の仕事の愚痴を聞いていた、上昇志向が強く、ゆくゆくは成績トップを目指したい、と言っていた。

「頑張るね」
「私、手を抜くの嫌いなんです」

そんな彼女に、いつしか心を惹かれていた、目標に向かって進む彼女はキラキラしていたからだろう。

しかし成績がトップ争いをするようになると、陰口を叩かれるようになったらしい。

「もおーなんなのよー、人が努力して働いてるのにぃ。「女はいいよな、体って武器があるもんな」ですって! 枕営業なんかしてないのに!」
「それってさ……僕のことかな?」

実際それで彼女の会社との契約が増えた事はないが、やはり立場上、よろしくないと思った。

僕から、正式に付き合おうかと言った。

双方の会社にも伝えた、僕は彼女の会社の担当から外れた。





付き合い始めて三年、彼女は立派なアラサーだった。

結婚しようか、と僕から言った。

彼女は喜んでくれた、式は簡単でいいと二人きりで外国で挙げて、二人名義でマンションも買った。

共働きだ。このご時世、そんなに残業もない。

なんとなく家事を分担できた。
朝ご飯は僕が作る、その間に彼女は掃除と洗濯をする。
夕飯は彼女、その間に僕は洗濯物を畳む。
片付けは二人で並んでする事が多かった。

洗いながらさりげなく手に触れる。

「夜は早めに寝ようか」

さらりと誘ってみる、彼女は恥ずかし気に微笑んだ。

「じゃあ、あとはやっとくから、お風呂お先にどうぞ」

まあここまではっきりではなくても、一つのベッドで寝ていれば、なんとなくお互いそんな気分になることはある。
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