君と恋をしよう
ああ、顔がにやけないようにしないと。
「水道光熱費と管理費を折半にしてくれたら、家賃は四万でいいって言ってくれて。今までより少し楽になるかも」
「そっか。先輩受付嬢が住むなら、しっかりした建物なのかな?」
「写真見せてくれた。なんかね、女性専用のマンションなんだって。外観、綺麗だったよ。オートロックもあるって」
そうかそうか、それは変な虫がつかなそうでいいな。
僕はにやけた顔を、さわやかスマイルに変えて言う。
「引っ越しはいつ? 手伝うよ」
「お友達は今月末で出るって言うから、その後かな」
実際には月末を待たずに引越しをすることになった。
***
6月最後の日曜日、僕は萌絵の家のアパートの前に車で乗り付ける。
既に幌付きの軽トラックが止まっていた、先輩の友達が引っ越しを手伝ってくれると言っていたからその人が持って来た車だろうか。
男手が要るだろうからと手伝いを申し出た。
「ん、でも、先輩の友達が旦那さんと来てくれるって」
僕は勝手に、それはルームシェアしていた先輩の友達の恋人だと思い込んでいた。
萌絵の会社の先輩とルームシェアしていた友人が、恋人と同棲することになり部屋を出て行くと言うから、もう旦那扱いなのかと、特にツッコミもせずにいたが。
「でも男手一人じゃ運べないものもあるんじゃない? いいよ、手伝いに行くよ」
言うと萌絵は嬉しそうに微笑んだ。
僕の時と違って、家具はベッドやタンスもある。家電は概ね要らなくなってしまうけれど、とりあえずマンションに運んでしまおうと言うことになったらしい。
月を跨ぐと家賃が発生してしまうからもったいないと、先輩は友人を追い出してくれたらしい、しばらく荷物が溢れているけど、それでよければ来るか?と言われて、萌絵は喜んで承諾したと言う。
僕がエンジンを止めると同時に、軽トラックの運転席のドアが開いて、男が降りて来た。
目が合って、お互い息を呑んだ。
「ふ、藤木さん!?」
僕と萌絵の、ある意味キューピッド、田代だった。
「先輩の友達の旦那さんって、お前か……!」
僕も車を降りながら声を上げていた。
なるほど、萌絵の『先輩の友達』とは田代の嫁で、その旦那はまさしく田代だと言う訳か。
「えっ、えっ、えっ!?」
田代はニヤニヤしながら近づいて来る、あーもー。
「ひょっとして、あのお持ち帰りのあと、ずっとうまく行ってるんすか!?」
鼻の穴が広がってるぞ、田代。
「うまく行ってると言うか、行ってないと言うか」
僕は溜息交じりに言う、だってまだろくに手すら繋いでいないのに、田代の求める『うまく行っている』には程遠いと思う。
「ははーん、まだ口説いてる最中ですか!?」
田代はしたり顔で顎を撫でながら言った。
「赤川女史の時だって、藤木さん、じっくり攻めてましたもんねぇ?」
「そんなんじゃない」
淳美の名前を出されてさすがに眉間に皺が寄った。
淳美とだって確かに交際までに時間はかかったが、それは最初は交際する気なんかなかったからで。
「藤木さんにかかればどんな女だってイチコロっすよ、ぐいぐい行ったらいいのに!」
こいつ、いいネタを握ったとばかりに嬉しそうに。
「水道光熱費と管理費を折半にしてくれたら、家賃は四万でいいって言ってくれて。今までより少し楽になるかも」
「そっか。先輩受付嬢が住むなら、しっかりした建物なのかな?」
「写真見せてくれた。なんかね、女性専用のマンションなんだって。外観、綺麗だったよ。オートロックもあるって」
そうかそうか、それは変な虫がつかなそうでいいな。
僕はにやけた顔を、さわやかスマイルに変えて言う。
「引っ越しはいつ? 手伝うよ」
「お友達は今月末で出るって言うから、その後かな」
実際には月末を待たずに引越しをすることになった。
***
6月最後の日曜日、僕は萌絵の家のアパートの前に車で乗り付ける。
既に幌付きの軽トラックが止まっていた、先輩の友達が引っ越しを手伝ってくれると言っていたからその人が持って来た車だろうか。
男手が要るだろうからと手伝いを申し出た。
「ん、でも、先輩の友達が旦那さんと来てくれるって」
僕は勝手に、それはルームシェアしていた先輩の友達の恋人だと思い込んでいた。
萌絵の会社の先輩とルームシェアしていた友人が、恋人と同棲することになり部屋を出て行くと言うから、もう旦那扱いなのかと、特にツッコミもせずにいたが。
「でも男手一人じゃ運べないものもあるんじゃない? いいよ、手伝いに行くよ」
言うと萌絵は嬉しそうに微笑んだ。
僕の時と違って、家具はベッドやタンスもある。家電は概ね要らなくなってしまうけれど、とりあえずマンションに運んでしまおうと言うことになったらしい。
月を跨ぐと家賃が発生してしまうからもったいないと、先輩は友人を追い出してくれたらしい、しばらく荷物が溢れているけど、それでよければ来るか?と言われて、萌絵は喜んで承諾したと言う。
僕がエンジンを止めると同時に、軽トラックの運転席のドアが開いて、男が降りて来た。
目が合って、お互い息を呑んだ。
「ふ、藤木さん!?」
僕と萌絵の、ある意味キューピッド、田代だった。
「先輩の友達の旦那さんって、お前か……!」
僕も車を降りながら声を上げていた。
なるほど、萌絵の『先輩の友達』とは田代の嫁で、その旦那はまさしく田代だと言う訳か。
「えっ、えっ、えっ!?」
田代はニヤニヤしながら近づいて来る、あーもー。
「ひょっとして、あのお持ち帰りのあと、ずっとうまく行ってるんすか!?」
鼻の穴が広がってるぞ、田代。
「うまく行ってると言うか、行ってないと言うか」
僕は溜息交じりに言う、だってまだろくに手すら繋いでいないのに、田代の求める『うまく行っている』には程遠いと思う。
「ははーん、まだ口説いてる最中ですか!?」
田代はしたり顔で顎を撫でながら言った。
「赤川女史の時だって、藤木さん、じっくり攻めてましたもんねぇ?」
「そんなんじゃない」
淳美の名前を出されてさすがに眉間に皺が寄った。
淳美とだって確かに交際までに時間はかかったが、それは最初は交際する気なんかなかったからで。
「藤木さんにかかればどんな女だってイチコロっすよ、ぐいぐい行ったらいいのに!」
こいつ、いいネタを握ったとばかりに嬉しそうに。