君と恋をしよう
ああ、よく給湯室で数人の女子相手に盛り上がってたな、人懐っこい奴だと感心していたが……って、そこで僕の話も!?
「そっかぁ、うちの女子も意外とオクテっすねー、藤木さんにお茶出す当番まで勝手に決めてんのに」
ああ、お茶か……別に女性社員が10時と3時にお茶出しするのは義務ではない、給茶機もあるしコーヒーメーカーもあるから、その管理は持ち回りで女性社員がやっているのは知っていたが、え、机まで運んで来てくれるのはサービスではなかったのか……!
「つか、藤木さんが鈍すぎなんでしょ! 大丈夫っすよ、ガンガン行きましょ! モエちゃんもきっと待ってるっすよ!」
「そ、そうかなぁ……」
思わず鼻の下が伸びそうになった時、
「利文(としふみ)?」
頭上から女の声がした。
田代の奥さんが開放廊下からこちらを見ていた。
僕を見ている、僕は慌てて頭を下げた、顔を上げて再び目が合ったけれど。
どうにも睨まれている気がした。
田代の奥さん、華さんが鉄製の階段を音を立てて降りてくる、なんでだ、怒ってるぞ?
「あなたが、萌絵ちゃんの友達?」
あー友達ー、そういう紹介かー。
内心がっかりしながら、僕は笑顔で挨拶する。
「はい、藤木と……」
「存じ上げています、私達の披露宴で祝辞をくださいました」
「あ」
そうです、そうでした。
「今日の手伝いに友達が来てくれると聞いて、会社の子かと思って聞いたらと男性だと言うので、あの萌絵ちゃんがいつの間に、まさかあの時ナンパした彼?と思っていたら案の定あなたで」
そこまで一気に言うと、はあ、と大きなため息を不機嫌な顔で吐いた。
「何も知らない子だと思ってからかうのはやめて下さい」
睨まれた、いや、それは誤解だ! 僕から萌絵を誘ってはいない!
「だから、華」
田代が珍しくしっかりした声で言った、いつもはなんでも茶化して話すような男なのに。
「藤木さんはそんな人じゃないって言ってるだろ。離婚したって言ったって藤木さんが全面的に悪い訳じゃない」
僕は離婚の理由を田代には話していない、それでもそう言ってくれるのはありがたい。
「人望があって、責任感も強い人だ。地方から出たての子だからって、そこに漬け込んで悪さするような人じゃない」
いや、だから、こそばゆいっての。
「だからって、離婚して日も浅いのに」
やはりそこか。助平なジジイに捕まったとでも思われてるんだな。確かに僕自身も節操ないとは思うよ。
もう、萌絵から声をかけて来たなんて言える状況ではない、僕は頭を下げた。
「心配は判ります、本当にごめんなさい。でも僕も萌絵を傷つけようとか、全く思っていなくて。ただ大切にしたいと」
なんて、恥ずかしい告白を始めると。
「あ、来てたんだ」
頭上から萌絵の声がした、僕は慌てて両手で口を塞ぐ。
「そっかぁ、うちの女子も意外とオクテっすねー、藤木さんにお茶出す当番まで勝手に決めてんのに」
ああ、お茶か……別に女性社員が10時と3時にお茶出しするのは義務ではない、給茶機もあるしコーヒーメーカーもあるから、その管理は持ち回りで女性社員がやっているのは知っていたが、え、机まで運んで来てくれるのはサービスではなかったのか……!
「つか、藤木さんが鈍すぎなんでしょ! 大丈夫っすよ、ガンガン行きましょ! モエちゃんもきっと待ってるっすよ!」
「そ、そうかなぁ……」
思わず鼻の下が伸びそうになった時、
「利文(としふみ)?」
頭上から女の声がした。
田代の奥さんが開放廊下からこちらを見ていた。
僕を見ている、僕は慌てて頭を下げた、顔を上げて再び目が合ったけれど。
どうにも睨まれている気がした。
田代の奥さん、華さんが鉄製の階段を音を立てて降りてくる、なんでだ、怒ってるぞ?
「あなたが、萌絵ちゃんの友達?」
あー友達ー、そういう紹介かー。
内心がっかりしながら、僕は笑顔で挨拶する。
「はい、藤木と……」
「存じ上げています、私達の披露宴で祝辞をくださいました」
「あ」
そうです、そうでした。
「今日の手伝いに友達が来てくれると聞いて、会社の子かと思って聞いたらと男性だと言うので、あの萌絵ちゃんがいつの間に、まさかあの時ナンパした彼?と思っていたら案の定あなたで」
そこまで一気に言うと、はあ、と大きなため息を不機嫌な顔で吐いた。
「何も知らない子だと思ってからかうのはやめて下さい」
睨まれた、いや、それは誤解だ! 僕から萌絵を誘ってはいない!
「だから、華」
田代が珍しくしっかりした声で言った、いつもはなんでも茶化して話すような男なのに。
「藤木さんはそんな人じゃないって言ってるだろ。離婚したって言ったって藤木さんが全面的に悪い訳じゃない」
僕は離婚の理由を田代には話していない、それでもそう言ってくれるのはありがたい。
「人望があって、責任感も強い人だ。地方から出たての子だからって、そこに漬け込んで悪さするような人じゃない」
いや、だから、こそばゆいっての。
「だからって、離婚して日も浅いのに」
やはりそこか。助平なジジイに捕まったとでも思われてるんだな。確かに僕自身も節操ないとは思うよ。
もう、萌絵から声をかけて来たなんて言える状況ではない、僕は頭を下げた。
「心配は判ります、本当にごめんなさい。でも僕も萌絵を傷つけようとか、全く思っていなくて。ただ大切にしたいと」
なんて、恥ずかしい告白を始めると。
「あ、来てたんだ」
頭上から萌絵の声がした、僕は慌てて両手で口を塞ぐ。