君と恋をしよう
華さんより歳上だと言う。セミロングの髪を後ろに一つに束ね、メガネをかけた女性が出迎えてくれた。
「右の部屋使ってね。冷蔵庫やなんかはとりあえずリビングに」
リビングには前の住人のものと思しき家具も置かれていた暫くは狭そうだな。
「あの」
僕が声をかける。
「ここは男子禁制でしょう?僕達が入ってもいいんですか?」
同居人、竹内さんが笑った。
「住むのが駄目なだけで、出入りは大丈夫よ。引っ越し業者も宅配のお兄さんも入ってくるわよ。でも管理人は24時間常駐で、人の出入りは厳しくチェックしてるわね。あまり何度も来ると声を掛けられるみたいよ、気をつけてね」
ウインク付きで言われた、特別な関係だとバレてるんだな。それでも僕は「はあ」と答えておいた。
出した時と同様、大きな荷物を田代と運び込む。
前の和風な部屋とは違う、明るい洋室は前より少し狭いけれど、カーテンをレールにかけている萌絵の顔は嬉しそうだった。うん、あの昭和感漂う部屋より、ずっと似合うよ。
僕の時の引っ越しとは大違いだ、一日がかりで引っ越しを終えた、もう外は真っ暗だった。
「お疲れ、引っ越し祝いにご飯奢るわ」
そう言って竹内さんが近所の居酒屋に誘ってくれた。
萌絵と飲み屋に行くのは初めてだった。
意外だった、萌絵は酒が強いようだ、駆けつけ2杯のビールを飲んでも顔はケロリとしている。
田代達の披露宴でも、実は結構飲んでいたのかな?
3杯目を半分ほど飲んだ頃、萌絵が用を足す為に席を立つ。
「ごめんなさい」
萌絵の姿が見えなくなると、華さんが言った。
「私、藤木さんを誤解してました」
「え」
突然の告白に僕は驚いてしまった、確かに新居に向かう頃には最初に見せていた棘は無くなっていたけれど。
「利文の言う通り、本当に真面目な方だと判りました、本当に駄目ね、思い込みで悪い人だなんて思って」
「だろう!?」
田代が酔っ払った赤い顔をして言う。
「本当にいい人なんだよ!早く再婚したらいいっすよ!」
簡単に言うなよー。
竹内さんも焼き鳥片手にニヤニヤ笑っていた。
「ふふ、男嫌いの萌絵ちゃんが懐くのも、なんか判るわね」
あ、その事は知ってるのか。
まあ父ですよ、父。
「まあ、あんまり帰りが遅い事とかあったりしたら、私が許しませんから」
メガネの奥の目を光らせて言われた。さながら竹内さんは母ですか?
「萌絵ちゃんはうちの課のアイドルなのよ。受付嬢なんかできないって言いながら、3日後には主だった内線番号、記憶して来るくらい真面目でさ。無理無理って言いながら頑張ってる姿を見ると応援したくなっちゃうのよー」
「そうなんですか」
健気な姿を想像して、顔は勝手ににやけた。
「そんな子だから。酷い目に遭わせたら承知しませんから」
そう言って微笑む竹内さん、華さんもうんうんと頷いていた──よもや、こんなディフェンダーがいるとは。
「右の部屋使ってね。冷蔵庫やなんかはとりあえずリビングに」
リビングには前の住人のものと思しき家具も置かれていた暫くは狭そうだな。
「あの」
僕が声をかける。
「ここは男子禁制でしょう?僕達が入ってもいいんですか?」
同居人、竹内さんが笑った。
「住むのが駄目なだけで、出入りは大丈夫よ。引っ越し業者も宅配のお兄さんも入ってくるわよ。でも管理人は24時間常駐で、人の出入りは厳しくチェックしてるわね。あまり何度も来ると声を掛けられるみたいよ、気をつけてね」
ウインク付きで言われた、特別な関係だとバレてるんだな。それでも僕は「はあ」と答えておいた。
出した時と同様、大きな荷物を田代と運び込む。
前の和風な部屋とは違う、明るい洋室は前より少し狭いけれど、カーテンをレールにかけている萌絵の顔は嬉しそうだった。うん、あの昭和感漂う部屋より、ずっと似合うよ。
僕の時の引っ越しとは大違いだ、一日がかりで引っ越しを終えた、もう外は真っ暗だった。
「お疲れ、引っ越し祝いにご飯奢るわ」
そう言って竹内さんが近所の居酒屋に誘ってくれた。
萌絵と飲み屋に行くのは初めてだった。
意外だった、萌絵は酒が強いようだ、駆けつけ2杯のビールを飲んでも顔はケロリとしている。
田代達の披露宴でも、実は結構飲んでいたのかな?
3杯目を半分ほど飲んだ頃、萌絵が用を足す為に席を立つ。
「ごめんなさい」
萌絵の姿が見えなくなると、華さんが言った。
「私、藤木さんを誤解してました」
「え」
突然の告白に僕は驚いてしまった、確かに新居に向かう頃には最初に見せていた棘は無くなっていたけれど。
「利文の言う通り、本当に真面目な方だと判りました、本当に駄目ね、思い込みで悪い人だなんて思って」
「だろう!?」
田代が酔っ払った赤い顔をして言う。
「本当にいい人なんだよ!早く再婚したらいいっすよ!」
簡単に言うなよー。
竹内さんも焼き鳥片手にニヤニヤ笑っていた。
「ふふ、男嫌いの萌絵ちゃんが懐くのも、なんか判るわね」
あ、その事は知ってるのか。
まあ父ですよ、父。
「まあ、あんまり帰りが遅い事とかあったりしたら、私が許しませんから」
メガネの奥の目を光らせて言われた。さながら竹内さんは母ですか?
「萌絵ちゃんはうちの課のアイドルなのよ。受付嬢なんかできないって言いながら、3日後には主だった内線番号、記憶して来るくらい真面目でさ。無理無理って言いながら頑張ってる姿を見ると応援したくなっちゃうのよー」
「そうなんですか」
健気な姿を想像して、顔は勝手ににやけた。
「そんな子だから。酷い目に遭わせたら承知しませんから」
そう言って微笑む竹内さん、華さんもうんうんと頷いていた──よもや、こんなディフェンダーがいるとは。