君と恋をしよう
「んでも実際萌絵ちゃんも可愛いっすよね! 受付カウンターにスッポリ入ってるとこがまた可愛くて。行くとピョコって顔上げるんすよ、その時の顔がまた可愛くて! 顔覚えてくれたんで、にこっとしてくれるしぃ! それこそ初めは新人さんで緊張してるのかなとは思ったんすよ、行くといつも真っ赤な顔して、口の中でモゴモゴ喋って。一緒にいる先輩嬢にいつも注意されててさ、こっちは別にいいのになあって思ってたんすよね。でも最近は目を見て挨拶するし、まあイレギュラーな事があると緊張しちゃうみたいですけど、前よりは全然! 藤木さんのお陰っすかねー?」
だったらいいけどな。
萌絵の会社には何度か行ったことがある、制服は知ってる、受付がある場所も。田代が言う姿を想像して、自然と笑顔になった。
「あ、じゃあそんな可哀想な藤木さんの為にイベントに招待してあげましょう! 今度青年部でバーベキューやるんで、萌絵ちゃんも誘ってきてくださいよ!」
「ああ、今年はバーベキューか」
青年部は主に20代の社員の親睦を目的としたイベントを企画する有志が集まった部活のようなものだ。忘年会や新年会、花見なども担当している。
夏は花火大会だったり地曳網だったり毎年変わるが、社員の家族も集まる、一大イベントだ。
「でも僕は課長だし」
基本的に役付きは出席しない、若手社員の親睦が目的なのに、役付きが居ては話したい事も話せないからね。
「ましてや萌絵は駄目だろ」
社費で行う手前、家族は参加できるが友達は不可だ。恋人はグレーゾーンではあるが……。
「華も来るんすよ」
「そりゃ、華さんは田代の奥さんだし」
「萌絵ちゃん、来るかなって言ってましたよ!?」
「そこは来ませんって答えろよ」
「でもさあ、これも萌絵ちゃんの為と思って」
「萌絵の為?」
「人馴れした方がいいっすよ。特定の人ばっかりじゃなくってさ」
「でも、それって……」
荒療治にならないか? 大勢の人は苦手って言ってたぞ?
「藤木さんと華が面倒見りゃいいじゃないですか。課長はずっしり座っててくれればいいんですから」
「ああ……なるほど」
確かに僕がちょろちょろしてても邪魔かな。
「判ったよ、誘ってみる」
「あざーすっ!」
まったく上司とは思ってないであろう挨拶をして田代は居なくなった。
***
八月下旬の日曜日。
当日は車を出すよう頼まれた、もしかしたらそれが目的だったのか?
萌絵と大量のビールや食材を乗せ、川のほとりのバーベキュー場へ向かう。
僕達が着くと、先発隊は既に火起こしをして準備万端で待っていた。
「藤木さーん」
「あざっす! お疲れっす! 荷物運びます!」
我が社の若手の男が三人、ヘラヘラ笑いながらやってきた。
「ああ、頼むよ」
しかし僕より萌絵に興味があるようだ、僕の返事などろくに聞いてない様子で、萌絵に笑いかけている。
田代の結婚式にもいたメンバーだ、萌絵が僕と帰った事を知っているだろう、積極的な女の子だとか思われているのだろうか。
「橋倉さんは、座っててねー」
男が案内でもしようとしたのか、肩に手を回そうした。萌絵は怯えた顔で後ずさり、車のドアに自分の体を挟むように身を守った。
やれやれ。
「荷物は任せるよ、萌絵、行こうか」
僕が声をかけて歩き出すと、慌ててついて来る。
だったらいいけどな。
萌絵の会社には何度か行ったことがある、制服は知ってる、受付がある場所も。田代が言う姿を想像して、自然と笑顔になった。
「あ、じゃあそんな可哀想な藤木さんの為にイベントに招待してあげましょう! 今度青年部でバーベキューやるんで、萌絵ちゃんも誘ってきてくださいよ!」
「ああ、今年はバーベキューか」
青年部は主に20代の社員の親睦を目的としたイベントを企画する有志が集まった部活のようなものだ。忘年会や新年会、花見なども担当している。
夏は花火大会だったり地曳網だったり毎年変わるが、社員の家族も集まる、一大イベントだ。
「でも僕は課長だし」
基本的に役付きは出席しない、若手社員の親睦が目的なのに、役付きが居ては話したい事も話せないからね。
「ましてや萌絵は駄目だろ」
社費で行う手前、家族は参加できるが友達は不可だ。恋人はグレーゾーンではあるが……。
「華も来るんすよ」
「そりゃ、華さんは田代の奥さんだし」
「萌絵ちゃん、来るかなって言ってましたよ!?」
「そこは来ませんって答えろよ」
「でもさあ、これも萌絵ちゃんの為と思って」
「萌絵の為?」
「人馴れした方がいいっすよ。特定の人ばっかりじゃなくってさ」
「でも、それって……」
荒療治にならないか? 大勢の人は苦手って言ってたぞ?
「藤木さんと華が面倒見りゃいいじゃないですか。課長はずっしり座っててくれればいいんですから」
「ああ……なるほど」
確かに僕がちょろちょろしてても邪魔かな。
「判ったよ、誘ってみる」
「あざーすっ!」
まったく上司とは思ってないであろう挨拶をして田代は居なくなった。
***
八月下旬の日曜日。
当日は車を出すよう頼まれた、もしかしたらそれが目的だったのか?
萌絵と大量のビールや食材を乗せ、川のほとりのバーベキュー場へ向かう。
僕達が着くと、先発隊は既に火起こしをして準備万端で待っていた。
「藤木さーん」
「あざっす! お疲れっす! 荷物運びます!」
我が社の若手の男が三人、ヘラヘラ笑いながらやってきた。
「ああ、頼むよ」
しかし僕より萌絵に興味があるようだ、僕の返事などろくに聞いてない様子で、萌絵に笑いかけている。
田代の結婚式にもいたメンバーだ、萌絵が僕と帰った事を知っているだろう、積極的な女の子だとか思われているのだろうか。
「橋倉さんは、座っててねー」
男が案内でもしようとしたのか、肩に手を回そうした。萌絵は怯えた顔で後ずさり、車のドアに自分の体を挟むように身を守った。
やれやれ。
「荷物は任せるよ、萌絵、行こうか」
僕が声をかけて歩き出すと、慌ててついて来る。