君と恋をしよう
そんな姿に、男達は肩を竦めた。
用意されていた椅子に座る、萌絵も隣に座った。
「どうやらうちの男どもは君狙いだな」
「えっ?」
「田代も可愛いとかなんとか言ってたし」
萌絵は赤くなって俯いた。
「まあ、田代から釘を刺してもらうよ、君に近づくなってね」
彼女はコクコクと頷く。
「でも……」
小さな声で言う。
「田代先輩も……仕事に支障があるから、いつまでも男性嫌いじゃ困るからって言ってくれて……少し……積極的に、なれって……」
「やれる事とやれない事とあるでしょ?」
彼女はこくんと頷く。
いや、これは僕の嫉妬なんだけど。
「まあできるだけ僕のそばに」
なんて言うと、独占欲が強いみたいで嫌だな。
でも彼女は微笑んだ。
「うん」
恥ずかしげに言う彼女が可愛くて……ああ、襲いたい!
しばらく萌絵と談笑していると、呼ばれた。
「藤木さーん、火起こしお願いできますかー!?」
新しい焼き台を追加したらしい、僕は二つ返事で立ち上がった。
僕が離れると、すぐさっきとは別の若い男衆三人が萌絵に寄っていくのが見えた、まあ他に人の目もある、変な事はしないだろうと僕は頼まれたことをする事にした。
焼き台に火種を入れて、炭を焚べる。
ふと萌絵を見た、男達は萌絵の反応など気にしもしないで声をかけまくっていた。萌絵は俯いて小さくなってろくに返事などしていない、顔は青ざめている。
──まったく、女の子の扱いも知らないのか?たたでさえ萌絵は……。
「萌絵」
声をかけると萌絵はぱっと顔を上げた。
「こっちおいで。手伝ってくれる?」
彼女は待ってましたとばかりに立ち上がって、転がる勢いで僕のところまで来た。男達は口を尖らせぶつぶつ文句を言っていた。
「何をすれば」
萌絵が言う、本当に手伝うのか、引き離す口実だけだったんだけど。
「じゃあこれでパタパタして」
小さなうちわを渡した、萌絵は素直に焼き台を仰ぎ始める。
「違うよ」
僕が言うと、萌絵は「え?」と僕を見上げる、素の感じが可愛いな。
「僕を仰ぐの」
「ええっ?」
途端に恥ずかしそうに真っ赤になった、可愛いなあ。
「嘘うそ、ちゃんと炭に火がつくまで仰いで」
「もうっ!」
真っ赤になりながら怒って、萌絵はまた焼き台に向かって仰ぎ始める。
「魚、釣ってくださーい、ノルマは一人三匹でーす!」
幹事が声を上げた、僕と萌絵にも釣竿をくれる。
「じゃあやってみようか」
声をかけると、萌絵は「うん」と言って立ち上がる。
川を堰き止めて作られた釣り堀だった。
既に何人かは釣りを始めている。
餌はイクラ、それを針につけて垂らす。