君と恋をしよう
今も、前に並ぶ男性がふざけあっているうちに萌絵の方によろけた、それを避けようとして萌絵もよろめいた。

ああ、もう。

僕は少し乱暴に抱き寄せる。

「た、たっちゃ……」
「君は僕しか見えてない、いいね?」

物凄く傲慢なセリフだけど。
それでも彼女は安心したように微笑んだ。



夜のパレードが始まる頃までに乗れたアトラクションは5個だった、殆ど並んでいた時間だ。仕方ない、土曜日のディズニーランドなどこんなものだろう。

目の前を煌びやかなパレードのフロートが通り過ぎる。
それらよりもキラキラした目で、萌絵はそれを観ていた。

そっと抱き寄せると、一瞬はびっくりしたように僕を見上げた。でも僕だと判ったかのように、すぐに破顔して、また目の前のパレードに目をやる。

可愛いな。

思わず髪にキスをした。

萌絵が驚いたのか、肩を竦ませて僕を見た。

「たっちゃ……」

呼んだ唇にキスをした。

萌絵は抵抗して、僕の体を押したけれど、僕は萌絵の肩を抱く手に力を込めた。
一瞬離したけれど、再度重ねた。その時はもう萌絵の抵抗はなかった。


***


翌日、待ち合わせの場所に行くと萌絵は恥ずかしそうに頬を赤らめた、昨夜のキスかな。

ディズニーランドのではない。

別れ際にも車の中でした、できればもっとディープなのをしたいとこだったけど、諦めた。唇に舌が触れただけで怯えられたしまったから。それでも随分長い事重ねるのは許してくれたが。

これはまだまだ先が長そうだ。

僕はカフェに誘った。

「昨夜は早く眠れた?」

萌絵は小さくなったまま頷いた。

「朝も早かったもんね。今度は泊まりで行こうか、そしたらゆっくりできるよ」

言うと萌絵は嬉しそうに笑った、やっと笑ってくれた。

「前の日に泊まると、早く入れるって聞いたよ、それやってみたい!」
「えーじゃあ二晩も泊まるのかー」
「あ、今度は私もお金払う!」

今回は萌絵の誕生日プレゼントなので、当然僕が全部払っている。

「いいよ、そんなの。こういうのは男の甲斐性なの。気にしないで」

言うと萌絵は恥ずかしそうにしながらも頷いた。

「あ、ディズニーランドもいいけど、クリスマスは何処かにイルミネーションでも見に行こうか」

彼女は小さく首を傾げた。

「クリスマス、の?」

まだ先だとでも言いたげだ。

「ドライブがてら少し遠出して」
「遠出? どこ?」
「それはこれから考えるけど……泊まりで行こうか?」
「泊まり? そんな遠くに?」
「そうだなあ、有名なとこだと何処かな、神戸のルミナリエじゃあ遠いかな、でもハウステンボスじゃもっと遠いしな。萌絵が行きたいとこがあればそこでも」

途端に萌絵の顔が明るくなった。

「探しておくっ!」

その顔があまりに明るく、嬉しそうに見えたので。

「あのさ、萌絵」

ため息まじりに言う。

「え、なに……」

少し怒った口調になったので、萌絵はおっかなびっくりに言う。

「クリスマスに泊まりに誘うってさ、下心しかないからね。僕、期待するからね」

そうはっきり言うと、耳まで赤くして萌絵は黙り込んだ、意味は理解してくれたらしい。

「断るなら今だよ、僕、我慢しないからね」

彼女は耳まで赤くなってこくんと頷いた、今度ばかりは機械仕掛けのようにぎこちなかったけれど。

よおし、了承付きだ、絶対宿を取ってやる!!!
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