君と恋をしよう
冬がはじまるよ
11月中旬、出社してパソコンを立ち上げると社内メールが来ていた。
『忘年会のお知らせ』
もうそんな時期か。
『お疲れ様です。青年部です。
今年の忘年会は、船上でクリスマスパーティーをする事にしました。
つきましては、参加の可否と共に、プレゼント交換会のプレゼントを提出して頂けるようお願いいたします。
金額は千円以上、上限は設けませんが、良識の範囲内でお願い致します。
必ず記名したクリスマスカードを封入して下さい、なくならないよう必ずラッピングの中にお願いします。
なお、明らかに男女比が違うので、女性には必ず男性社員の物が行き届くようにしたいので、提出時に男女が判るようシールを貼らせて頂きます。
なので男性は、女性も男性も喜びそうなものをお願いします。
以上、よろしくお願いいたします。』
そして日時と金額と、会場となる船の名前、そしてプレゼントの提出期限と、提出先として青年部数名の名前が書かれていた。
船上パーティーか……また思い切った事をするな。
他に来ていた社外からのメールもチェックしていると、田代がやってきた。
「やっと公示されましたね」
何のことだと横目で見ると、田代はニヤニヤしながらまた手近な椅子を引き寄せて、僕の隣に座る。
「忘年会っすよ。案出したの、俺っす」
「へえ? 高く付くんじゃないのか?」
「まあ社費の補助もありますし。確かに少し高いけど、プレゼント代もあるから来たくない奴は来なくて結構って奴で」
また思い切った事を。
「藤木さんは、絶対参加です」
「え、なんで?」
「この企画は、女子達の肝いりなんです!」
んんん?
「うちの女子達も可愛い事! 「もー藤木さんってば鈍すぎなの! こんなに好き好きアピールしてるのに、全然気付いてくれないのよ! もー田代くん、何とかして!!!」って泣きついてきて」
何処がだろう? 僕はそんなに鈍い方では無いと思うが、相変わらず女子に声をかけられるのは10時と3時のお茶の時間だけなんだが。そこで何か感じるのは、とても難儀だぞ?
「田代、言いたくないが、僕は一応、恋人が……」
「さっぱり進展してない、10歳以上年下の彼女でしょ」
う、うるさいっ。
「まあさあ、大羽文具の受付嬢には劣りますけど、うちの女子だっていい子いますよお? 手近なとこでそろそろ手を打ったらどうですか?」
「うん、と言える事と言えない事が」
そろそろ手を打てと言われて、社内の女の子に手を出せるほど、図太くないし、困ってないし……いや、欲求不満ではあるが。