君と恋をしよう
少しは距離は縮まってるんだよな。

横浜駅のデパートで3枚セットのタオルを買った。

ラッピングの時、カードを入れておけと言われたのを思い出す。
頼むとカードは有料だがあると言われて購入し、その場で筆ペンを借りて書き込んだ。

Happy holiday

忘年会だが、まあいいだろう。
あと藤木とサインと入れてそれを封入してもらった。


***


果たして、12月半ばの忘年会当日。

立食のパーティーだったが、僕は壁際の椅子に座って、主に部長と話し込んでいた。

時折女子がやってくるが、僕がそこから離れないと判るとすごすごと引き下がる。

「かっちょー、ぶっちょー! 料理足りてます!? 取り行って下さい! 飲み物も!」

どうやら引き離そうとした田代がやってくるが、部長に引き止められる、ちょうど盛り上がってるとこなんだよ。

田代も引き下がると、遠くで女子達にボディーブローを食らっていた。
ふむ、どうやら女子達は本気で僕を……?

横浜港を一周して船が山下公園に戻る頃、プレゼントの譲渡が始まる。

ビンゴゲームでビンゴになった順に、くじを引く形式だった。

我が社の男女比はほぼ3:1だ、つまり多くは男性に男性のプレゼントが行く事に……あ、しまった、僕は萌絵の趣味で買ってしまった、ピンクに蝶とか刺繍されてたぞ? ああ、どうか女性に行きますように。

僕は小さな瓶の日本酒セットが当たった、男性社員からのものだ、少しホッとした。

そして。

女子社員のざわめきが聞こえた。

「……さんの、誰も受け取ってない……」

ん?

「何処へ……」
「誰……藤木さん……」

……そっか。ありがとう、みんな本当に僕の事を想ってくれてるんだな、こんな歳でバツイチの僕がそんな風に思ってもらえるだけで嬉しいよ。

そして、ごめん、流石に包装紙で判ったよ。

フロアを見渡した、田代がいない。

そう僕が用意したものは田代に渡っていた、ありがとう田代、お前本当にいい奴だな!

おそらく女子に見つかれば大騒ぎになると思ったのだろう、よかった、これで仲のいい女子に渡されたりしたら、僕は本当に困るよ。

後日それは華さんが使っていたと萌絵が教えてくれた、よかった、有効利用だ。





下船して、若い者は二次会へ行こうと騒いでいる。

僕は。

なんだか無性に萌絵に会いたくなった。
ほろ酔いなのもあるのだろうか。

ジャケットの内ポケットからスマホを取り出した、萌絵に発信すると、すぐに発信音が途切れる。

『たっちゃん? どうしたの?』

どうもこうも。

君の顔が、見たいだけだよ。
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