君と恋をしよう
Step into Christmas
12月。

土曜日の23日の昼近く、僕は車で萌絵のマンションへ迎えに行った。

家を出る前に連絡してあったから、萌絵はマンションの前で待っていた、少し不安そうな顔だったが、行かないと言う選択肢はなかったらしい。

荷物はトランクへ入れようと車から降りると、頭上から声がかかった。

「ごゆっくりー」

同居人の竹内さんだ、見上げるとベランダからニヤニヤといやらしい笑みを浮かべて僕達を見ていた。

いや、まあ、その。

聞いた萌絵も顔を真っ赤にして、鞄をトランクに入れた、流石に僕より大きな鞄だ。でも二泊三日の旅行に何を持って行くんだろうな、女の子は。

僕は余裕を見せて、竹内さんにひらひらと手を振った、内心はドキドキしまくっていたけれど。
車の乗り込んでから聞く。

「竹内さんに、話したの?」
「う、ん……たっちゃんと旅行に行く、とは……」

まあ内緒と言う訳にはいかないけれど。こちらの下心はバレバレなのだろうか、あの笑顔は。

昼食はサービスエリアで済ませた。

そして夕方近くになって着いたのは軽井沢のリゾート施設、『高級』が付くような場所だ。
さすがに萌絵も知っていたらしい。

「え、こんなとこ……」

少し戸惑う萌絵の手を引いて中へ入る。

スタッフに案内された部屋はコテージ調の離れだ、風の音すら聞こえるほど静かだった。
萌絵は立ち竦んで緊張している。
まるで新しい家に来た猫だ。

「ちょっと外に出ようか」

僕が微笑んで言うと、彼女はホッとしたように頷いた、おいおい、着いた早々襲われるとでも思った? そこまで節操はなくないよ。

施設付属のショッピングモールへ行った、クリスマスの電飾があった。

「夜に来たらもっと綺麗だろうね、日が落ちたらまた来よう」

言うと彼女は嬉しそうに頷いた。

少し離れたところにある教会まで足を伸ばした。

祭壇には近付けない、それでも近くまで行って十字架を見上げる。

ああ、なんか、駄目だな、欲望の塊だ。

いつか君と。

隣に真っ白なドレスを着た君がいてくれたら、なんて馬鹿な事を考えてしまった。僕は全く懲りていないらしい。

施設を一周して戻ると、ちょうど日暮れで、ショッピングモールのイルミネーションを見る事ができた。

萌絵は僕の腕にしがみつくようにいた、ぎゅっと腕を掴まれて、人混みが怖いのかな?と見ると違った、興奮気味にイルミネーションを見ていた。

喜んでくれてるんだな、それは判って思わず微笑むと、萌絵が僕を見上げて微笑み返してくれる。

可愛いな。

我慢できずに身を屈めると萌絵は目を閉じて待ってくれた、そっと唇を重ねる。
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