君と恋をしよう
嫌がらないんだ。

受け入れてもらったキスは、いつもより温かく感じた。


***


宿に戻ると食事の時間だった、ゆっくりとそれを頂き部屋に戻る。

「疲れた? 今日はもう寝る?」

聞くと彼女は急に緊張した顔になる、食事の間はにこやかだったのに。

「いいよ、寝ても」

言うと彼女は首を左右に振った。

僕はなるべく優しく彼女の頬に触れた、優しくしたつもりだけど彼女は怯えたように肩を震わせる。

「明日でもいいよ?」

言ったけれど、彼女は俯いたまま言う。

「いい……たっちゃん、と……」

消え入るような声、その覚悟は後回しにしたら、萌絵に悪いな。

「……じゃあ……お風呂、一緒に入る?」

優しく聞くと彼女は頷いた。

「じゃあ、後からおいで」
「ん」

室内風呂から続く、小さいながら露天風呂がある。その湯船に浸かっていると、背後のドアが開く気配が。

足音が近づき、白い足が見えた、腰が見えて、引き締まった腹も視界に入る。
タオルで隠してくるような無粋ではなかった、今、萌絵は一糸纏わぬ姿ですぐ隣にいる。

少し体をずらしてその姿を見た。恥ずかしそうに俯き、肩までお湯に浸かっていた。

ああ、可愛すぎだろ!

お湯の中で揺れて見える大きな乳房が見て取れた。

「……あ」

視線を上げて、目の前の景色を見た萌絵が小さな声で言った。

「雪……」

萌絵の視線を追うと、確かにチラチラと雪が舞っていた。

軽井沢では、クリスマス頃には積雪があってもおかしくない、今年はまだ積もっていなかった。

「萌絵じゃ、雪なんて珍しくないだろ」
「うん、まだ降らないのかなって思ってた」

消え入りそうな小さな声で言う、いつもと違う事はホームシックを呼ぶのかもしれないな。

「横浜じゃ滅多に降らないよ、シーズンに二回降ればよく降ったと思うほどで。積もっても翌日には不自由ないくらいになってしまうしね」

それでも1センチ積もっただけで、車だ電車が止まって大騒ぎで、何人かは転んで怪我をする、本当に雪国の人からしたら笑えるだろうな。

「今度はどっか、雪を見に……ああ、萌絵はお正月は故郷で過ごすんだっけ。英気を養ってね」

言うと萌絵はこくんと頷いた、まだぎこちないけど。
僕は我慢できそうにない。

「萌絵……もう少しこっち来て」

萌絵は頷いて少しずれた、足同士があと指一本分というあたりまで。

「手、握ってもいい?」
「……うん」

彼女は答えて彼女の方から手を伸ばして来た、手の平同士を合わせて、指をそっと絡ませた。
指の関節の硬さから、緊張しているのは伝わって来る。

やっぱ、今日こそ、なんてのは無理かなぁ。

「イルミネーション、綺麗だった」
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