君と恋をしよう
萌絵が言った。

「ああ、明日も見に行こう」

それからもどうでもいい話で場をつなぐ、間をもたせたいのか、実はソレを回避したいのか……?

「ねえ萌絵」

話の腰を折って言った。

「うん」
「キス、したい」

途端に真っ赤になって俯いた。

「ねえ……?」

手を握り返して聞く。

裸になってこんなところまで来たんだ、落ちない筈はないんだけど──でも萌絵だからな。

「ごめん、嫌ならいいよ、変なこと言ってごめんね」

そう言って微笑んで、欲望をどうしようかと思っていると、萌絵が手を握り返してきた。ぎゅっと。

「大丈夫……キス……したい」

いつもなら「大丈夫?」とか「無理しなくていいよ」とか言える、でも今は無理、目の前に美味しそうな体があるんだ。

僕は右手を萌絵の頬に当てて、そっと僕の方に向けて上向きにさせた。

萌絵はすぐに目を閉じた、風呂で温まった筈なのに心持ち青ざめているように見える、唇も赤みが薄れて震えていた。

それだって、全て、僕のものだ。

頭を傾けて彼女にキスをした、柔らかく湿った唇が吸い付く。

すぐに離れた、でもすぐにまた重ねた。

「……んっ……」

戸惑った声が漏れる、でも拒否はしない。

だから僕は何度もついたり離したりを繰り返しながら、唇の感触を味わった。

少し長めのキスをした、彼女の肩が震える、僕は構わず唇を割って舌を差し入れた、彼女の戸惑いは伝わってくる、でもほんの少し口を開け僕を受け入れてくれた。

もっとねじ込みたい、君の口の中全てを舐めたい、その欲望を満たすために彼女の肩を抱いた。

「ん……っ」

控えめな声は、多少の拒絶は入っていた。

だから本当は乳房に触れたかった手は、彼女の頬を撫でた。

「こんなとこだとのぼせそうだ……ベッドに行こうか」

唇を離して聞くと、彼女は息を飲んだ。

最後の賭けだ、それはまあ大袈裟だが、もしこれで彼女が「うん」と答えれば、その先に進んでもいいって事だよな。

でもきっと彼女は拒否するだろう、そしたら僕はひとり淋しく夜を過ごそう。

でも、彼女は視線を合わせずに答えた。

「……うん」

小さな声は聞き逃しそうだった、でも彼女は確かにそう言った、恥ずかしそうに顔を真っ赤な染めている。

「ん……じゃあ僕は先に上がるね。ゆっくりでいいよ」

僕は立ち上がった、さりげなく前はタオルで隠して──でないともう大きく勃ち上がってて、そんなのがっついてるみたいで恥ずかしいだろう、いや現にがっついているんだが──静かに脱衣室に向かった。
ドアを閉める直前に見た彼女の小さな背中は、余計小さく見えた。

さてと。

まずは照明を落とし気味にして。
テイッシュを届くところに置いて。
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